Poem, TOKYO

Dec 14, 2023

Trace

by Yutaka Ninomiya

二宮 豊

そう
産毛色のわたしは
ブランコに
ゆられ
じゃあね
じゃあ


いくつもの
脳裏のネガをしまい込んできた
躑躅の杯から
蜜を飲み下し
喉奥の孵化直前の
幾重もの
影を
育てながら

コンクリートの竪穴
から轟く走行音
無名
と無温が
白日を再現し
生身を曝け出す
わたしは香草の呪いを
指に塗りたくり
はだが
油分に
混ざる
青い香り

光りが届かない
濃い茂み
この先のわたしは
両腕を脚に
額を盾に
落下物を掻き分け
進むのだろう

掌は濡れた土を弄り
いきものの
痕跡を探し出そうとしている
そこには
死骸に群がる
コマ送りの
黒い点線

あの真っすぐな
肌色の睫毛は
記憶のすぐそばに
瞼を閉じる
視界が暗すぎる
ということはない
そこに
ただある
わたし
掻き分け
わたしは
空洞に辿り着く
なにかの
せいのあと

Yutaka Ninomiya

Yutaka Ninomiya

Poet / Coordinator of crossing lines.

詩人。crossing linesコーディネーター。

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あの夏の砂つぶが