Poem, TOKYO
Oct 20, 2024
The Figure
by Yutaka Ninomiya
note
- Photography: ©️Daisuke Yokoyama.
- Daisuke Yokoyama: Born in 1982 in Hyogo Prefecture, currently residing in Osaka. Graduated in 2005 from Doshisha University with a major in Cultural History in the Faculty of Letters. Inspired by his own stuttering, he examines relationships and communication with others through the medium of portrait photography. Recently, he has been focusing on the body that produces “voice,” presenting works using photography and video. Notable recent exhibitions include “Awai wo Yukikau” at Kōrenbō (Tokyo, 2024) and “I Hear You” at Kanzan Gallery (Tokyo, 2022).
姿
二宮 豊
ことばは
密林の寝床に丸まったまま
この詩の始まりでは
獅子の咆哮で
朝日が身震いするはずだった
それはいにしえと呼ばれ
幼い記憶に刻まれるはずだった
だが獅子は身勝手な少年のようで
舞台に現れることはなかった
*
新宿の抜け殻を通り抜け
長いトンネルを巡った
足音の反響を追いやるために
鼻歌をてきとうに
遠い視線の先に光を見つけた時
からだが灯った
しゃべらない生き物たち
押しのけ
ぼくは無我夢中だった
(白衣の亡霊が
赤いブザーを
消そうと躍起になっている
私は叡智の暴力に身を任せてみる
不思議と蚊のような汗が引いていく
四〇〇キロの贅肉を抱えた幻影という現実
そうだ 目を閉じよう そうすれば
沖縄
バリ
インド
ドバイも良いな
何しろ口座には金がたんまりと
Sが私を揺さぶり起こそうとしている
いつもは寄りつきもしないくせに
ブザーは鳴り止まない
私は藍色のまどろみに降りていく)
*
なんだったのかしら
なにが?
いま一瞬だけ夢を見ていたの
空気は暖かくて
優しい湿気に満ちて
でも突然かさかさに乾いてくる
へんよね
気にしないことだよ
ぼくらはきちんと築き上げてきたのだから
いつかは崩れるってこと?
またそんなニヒルなジョーク
ごめんなさい
たぶん久しぶりに読んだから
まったく押入れの整理なんてするから
詩なんかを見つけて
そんなのを読むから
準備が遅れるんだ
*
朝日が昇りきると
気温はぐんぐん上がる
獅子は冷えた腐葉土の上に肚をつける
梢越しの光に
瞼をきゅうっと絞る
*
耳を塞いだまま
塵箱をみた
山盛りになった紙屑の中
蟻の軍隊が行進している
全員が足元を見つめ
ひそかな記憶となることを
黄金のメダルと
石碑に刻まれることを
夢見ている
*
(
これはたちの悪い言葉遊び
だがこの絨毯が作る皺は
私を虜にする
優雅で
華麗で
荘厳な
提灯鮟鱇を
諸君の机の上に
呼び起こす
頭の動きに合わせて揺れる
提灯が
諸君に何を伝えてくるのか
教えてほしい
なにができるというのか
ただの
*
振り子時計も眠りにつく
二八時一四分
弓を担いだ半獣の神が寝床を探し始め
獣たちが朝のひと鳴きに準備を始める時
酔いどれの羽虫が
街で標を失い
千鳥足で泳ぎ始める時
キッチンテーブルの上の万年筆が
書き上げられた手紙を転がり
床に落ちる
ペン先は曲がり
青いインクが
水溜りとなる
しずか
まるでひとりになったみたい
注
- Photography: ©️Daisuke Yokoyama.
- 横山大介: 1982年 兵庫県生まれ。大阪市在住。2005年 同志社大学文学部文化学科文化史学専攻 卒業。自身の吃音をきっかけに、他者との関係性やコミュニケーションのあり方をポートレート写真の手法を用いて考察している。また最近は、「声」を発する身体に注目し、写真や映像を使い作品を発表している。近年の主な展覧会に、「あわいを往きかう」空蓮房(東京 2024)、「I hear you」 kanzan gallery(東京 2022) 、などがある。
Yutaka Ninomiya
Poet / Coordinator of crossing lines.
詩人。crossing linesコーディネーター。