<Serialization>
Renshi "Book as Object"
Poem, TOKYO
May 18, 2023
Book as Object 2
by crossing lines renshi group
note
〈I am in You〉by Yuki Tawada, 2023 : Installation view ‘’The ship who sang’’ by Yuki Tawada at Kurenboh
Book as Object 2
crossing lines 連詩
二巡目
ネットの死海で死んだ本たちは
ビー玉やステゴンと灰青の塵にまみれ
蔵前の百円棚で紙の空華を燃やす
その多死を捲れば白く多生が羽撃くように
明るみに出され、解読されなくたってよかった
有用性や、まぼろしかも問わなかった
伝達への衝動は 未だ
一本めの骨となりうるか
店主はある女の骨から自分は生まれているのだと言った
それを聞いた人は「嘘つき野郎」とツイッターに呟いた
テックテックと音がする新しい犬がsubstackと吠えた
店主はまた彼岸花を食べて、「俺何か言った?」と呟いた
花のくびの骨をそっと折る
ゆびさきに余った力にも売買の価値
野ざらしの感情だけくわえていけ
残土からいま未完の詩行がぞろぞろと芽吹く
残酷な四月は 与え 奪う
ことばは刈られ智の部屋で剥製にされる
あるいは電脳の深海で
なお呼吸し続けるオブジェとなる
注
本作品は二〇二三年五月二十日に開催された「文学フリマ東京36」参加記念に巻かれた、五人の詩人による連詩である。各連毎に、石田、橘、田上、草間、二宮の順で綴られた四行詩により構成されている。
写真:〈I am in You〉by Yuki Tawada, 2023 : Installation view ‘’The ship who sang’’ by Yuki Tawada at Kurenboh
サイトプランナーで詩人の石田瑞穂と、コーディネーターで詩人の二宮豊による作品解説は、本ページ内の「クロッシングラインズ・ポイエーシス・ポッドキャスト」からお聴きいただけます。
crossing lines renshi group
Works of crossing lines renshi group
石田瑞穂
最新長篇詩集に『流雪孤詩』。国際ポエトリーサイト「Crossing Lines」プランナー。
橘麻巳子
『声霊』(七月堂)、近刊に『リベオートラ』(書肆子午線)、詩誌「NININ」。
草間小鳥子
ひとりで詩や短編小説を書いたり、数人で映像・音楽作品をつくり、詩や物語を拡張する活動をしています。
田上友也
詩と小説を書きます。PEDES編集部。趣味は古着とAV。嫌いなことは指図されること。
二宮豊
詩人。PEDES編集部。国際ポエトリーサイト「Crossing Lines」コーディネーター。
多和田有希
自ら撮影した写真を消す(削る、燃やすなど)という行為を通し、都市や群衆の集合的無意識や個の意識変容をイメージとして湧出させる。近年の主な展覧会に「歌う船」(2023年・観照空蓮房)「見るは触れる日本の新進作家vol.19」(2022年・東京都写真美術館)、「第12回恵比寿映像祭 時間を想像する」(2020年・東京都写真美術館)、「写真都市展—ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たちー」(2018年・21_21 DESIGN SIGHT)など。(WEB https://www.yukitawada.com/)