Poem, TOKYO

Mar 03, 2022

For a Photographic Object

by Mizuho Ishida

Photograph: "Ash of Photographic Memorial Service, 2021, Dec 19" by Akiyoshi Taniguchi
Text by Mizuho Ishida

灰の精霊流し 

石田瑞穂

写る 移る 映るモノたち
同音の閾を滴る者たち
すなわち 灰
写されて在ることがもう充分に
灰なのだとすれば
すべてのみえない光と共にいること
彼女の桃染のドレスの中身が
みえるたび遅いということ
名と異名のあわいで透け
傍らで遊戯するモノ
烈しく燃焼し漆黒に燻り息を吐き
硬く萎れ固まる炭素の落花
けれどもそこにはまだ何かが
欠けて写りあまつさえ
異物の骨絡みの隅々に
光は宿らんとしている
たんに 数えられない空虚
たんに ひとつの閾
新たなphotobjetの霊性?
あらゆる言葉の前では眼にみえない
現実態と可能態の区別が
つかない者へと転化する河原
絶対に口にできないもの
というモノが孕む衝動
灰の卵や虹の混濁という
あらゆる可能性をつかいきって
しまった物はこうして
純粋に付加的な可能態を
贈与されるだろう
写る移りこむ灰
デジタルからの始祖返り
霊性に宿るphotobjetとして−−。

Mizuho Ishida

Mizuho Ishida

Born 1973. A Japanese poet and critic. 

Published first collection of poems Segments-Kakerahen in 2006, then Sleepy Islands(2012), Faraway Atlas(2014), Ear, Bamboo Leaf Boat(2015) and Asian Dream(2019).Awarded with Gendaishi Techo Prize(1999), Mr. H Award(2013), Toson Shimazaki Memorial-Rekitei Award(2016).

In 2014, he attended the international poetry/novel reading project, the Invisible Wave. With a Japanese novelist Hideo Furukawa, and a poet Keijiro Suga, he toured five cities of France and England. The project was for Eastern Japan, still suffering from damages of East Japan great earthquake disaster and radioactive contaminations. 

1999年、第37回現代詩手帖賞受賞。個人詩集に、『片鱗篇』(2006年、思潮社・新しい詩人シリーズ)、『まどろみの島』(2012年、思潮社、第63回H氏賞受賞)、『耳の笹舟』(2015年、思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)、『Asian Dream』(2019年、思潮社)がある。2014年、欧州5都市で東日本大震災を語る朗読ツアー「見えない波」に参加。以後、海外での作品発表や朗読もしている。2020年11月には東京・蔵前のギャラリー「空蓮房」で1ヶ月半にわたり、写真家谷口昌良との共同展「Cath the Emptiness」を新型コロナ禍の中で開催した。アートと詩のコラボレーションとして2020年に『空を掴め』(写真:谷口昌良、Yutaka Kikutake Gallery Book)、2021年に『sibira』(ドローイング:野原かおり、Stoopa. Ltd)を上梓。獨協大学外国語学部主催「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクター。フェリス女学院大学、京都大学でも講義を担当。

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