<Serialization>

Renshi "Blue in Green"

Poem, TOKYO

Jun 30, 2024

Blue in Green 3

by crossing lines renshi group Ⅲ

 

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Blue in Green 3

crossing lines 連詩 Ⅲ

  三巡目


好きかきらいかの二つの選択肢では
初夏を生き抜いてはいけず
朝市で買ったサファイヤがきらめく
涙にも似た飲み物でのどをうるおす
人間も水からできていれば
この世もすべて海なのかもしれない


それな ドルフィンと笑うべき!
笑わないと夏がこない 長尾の教え
笑うために 野毛の地下路酒場へ
鯨のユッケと苺焼酎 〆はバー「R」へ
マスターのちょび髭をむずむずさせたい
ベンリアック10年 若い陽光の味


鯨を食べると死ぬんだよと幼いわたしは父に教え
みんなに笑われたことがあったっけ
「現代詩ラ・メール」終刊から月日が流れ
半分ぐらいの選者の先生たちが雲の上
そちらから鯨の群れが見えますか
たまには文壇バーの明かりを揺らし合図を下さいね


店は閉店まであと一時間
偉大な詩人よ
今夜のあご髭はどちらを指していますか?
沈没しかけの島で 魚たちともう一軒
やがて海のむこうから渡し守がやってくる
舟のうしろに笑いの陽を引き連れて

本作品は、各連毎に、長尾、石田、渡辺、二宮の順で綴られた六行詩により構成されている。

crossing lines renshi group Ⅲ

crossing lines renshi group Ⅲ

 

長尾早苗
1993年生まれ。著書に『聖者の行進』『フレア』(いずれも七月堂)他私家版多数。文芸創作ほしのたね、詩誌「ハルハトラム」、「La Vague」に参加。
 Website https://nagao-sanae-1.jimdosite.com/


石田瑞穂
https://crossinglines.xyz/writer/tokyo/mizuhoishida/


渡辺めぐみ
2001年に1篇の詩で「詩と思想」新人賞受賞。詩集に『光の果て』(萩原朔太郎生誕120年記念・前橋文学館賞受賞)、『内在地』(日本詩人クラブ新人賞受賞)、『ルオーのキリストの涙まで』(日本詩歌句大賞受賞)、『昼の岸』(日本詩人クラブ賞、高見順賞、現代詩人賞、小熊秀雄賞各最終候補)(全て思潮社)など5冊。現在日本現代詩人会詩集賞担当理事&入会審査委員。「詩と思想」書評委員。


二宮豊
https://crossinglines.xyz/writer/tokyo/yutakaninomiya/

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あの夏の砂つぶが